物を持つ動作で肘が痛い
肘に直接原因があるわけではなく、前腕(ぜんわん:肘から手にかけての腕)あるいは、上腕(じょうわん:肩から肘にかけての腕)の筋肉のバランスが崩れることによって起きているシステム障害が原因と考えています。
手先から肩首までの筋肉のシステムを整え、調和を整えることで、発生してしまっていた痛みは落ち着くと考えてます。
肘の動きは、曲げる、伸ばすのほかにひねるがあります。そして肩や手首の動きと合わせてとても複雑な動きをすることができます。
筋肉は関節を動かすときには、通常動かされる側の筋肉が縮(ちぢ)んで力を発揮します。
例えば、肘を曲げるときは上腕の前面についている「上腕二頭筋(じょうわんにとうきん)」が働きます。この時、上腕の後面についている「上腕三頭筋(じょうわんさんとうきん)」は働きませんからゆるみます。逆に肘を伸ばすときは、上腕三頭筋が縮んで力を発揮します、そして上腕二頭筋がゆるみます。
つまり、細かな動きの中では肩から腕、手の筋肉にかけての調和を取りながら複雑な動きを起こすというわけです。
これが、調和をとっているようにみえても、どれかひとつの筋肉に疲労の蓄積(ちくせき)が起きてしまうと、それに見合った調和のとり方をするようになるので、休まるはずの筋肉が常にわずかに働いている状況をつくり、痛くなる状況に進行します。
ただ、初期には「痛み」は、ストレスですから、早くにおさめるシステムのおかげででなくなることがあります。しかし、筋肉の機能が調整されることは少なく、次第に疲労がたまりやすくなり、再び痛み出してしまうのと同時に関節の面がゆがみ肘が伸ばせなくなったり、曲げられなくなったりします。また、ひねる動作も内側にひねれなくなったり、外側にひねれなくなったり、どちらにもひねると痛むのでできないという状態になることもあります。そのような状態では関節のゆとりがなくなってしまっているので、軟骨がぶつかるようになってしまい、軟骨が骨折してしまったりします。プロ野球選手に多い関節ネズミと呼ばれるものは、この肘の痛みの進行形のスポーツ傷害です。
また、どちらが先かということはできないのですが、長期にわたってこの痛みに悩まれている人は、「胸郭出口症候群(きょうかくでぐちしょうこうぐん)」と呼ばれる胸、肩、首の傷害に似た状態になり、神経伝達が良くないように考えています。
神経伝達は、例えると水道からホースで水をまくとします。通常勢い良く出ます。しかし、ねじれたり、踏まれたり、曲がったりすると急に水の出が悪くなります。私はこのようなものだといつも考えています。つまり、首から手の指先の方まで枝分かれしながら広がっている神経管を、胸の筋肉の働きが固くなってしまい押しつぶしてしまっていると考えています。
先日も、60代男性が、肘の痛みで顔も洗えなくなったと緊急来院されました。職業上、とても手や指先を繊細に使わなければならず、手首も曲がらなくなっているのは死活問題だから、ということでしたので診させてもらいました。肘を曲げると手は肩に着かず外に向いてしまいます。肩から手先まで、反対の腕よりも太くなってしまって固くなっています。指は伸びきることができません。動かすたびにしびれる、と言います。はじめは肩から肘、手と施術していましたが、動きは出てきたものの肩の動きは変化が乏しいのです。そこで、胸郭の筋肉を調整してみて、肩甲骨の動きが出始めた頃から手首も曲がり始めてくれました。痛みも来た時を10とした評価で施術終了時には3に評価が変わっていました。腕の太さも少なくなり手首を握った時、親指と中指が触れるぐらいのところまで変化をしていました。